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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     


 12月10日(日)――大会5日目。


 遮光カーテンがぴっちり閉じられた寝室には、しっとりとした暗闇が落ち。

 唯一の光源は、部屋の隅でほんのりと灯っている、ルームライトのみ。

 ライトグレーの羽毛布団の中。 

 薄っすらと開かれた目蓋。

 その狭間、未だ夢の中にいるらしい灰色の瞳は、ゆらりと揺らいだだけで。

 またゆっくりと長い睫毛が伏せられ、就眠へと落ちていく。

 しかし、その30秒後。

 今度は ぱっちりと開けられた大きな瞳。

 その視線の先に “あるもの” を認めた途端。

「~~~っっ!?」

 パリ12区に在るホテルの一室には、言葉にならない悲鳴が轟いていた。

 羽枕の上、乱れた金の頭だけを持ち上げ、焦って辺りを確認するも。

 そこは自分がこの4日間、滞在していたスタンダードルームとは、あまりにも懸け離れたスイートらしき1室。

 そして、ヴィヴィの目の前ですやすやと眠っていたのは、かの国の皇太子――

 だとしたら、この場で舌を噛み切って自害したくもなるが。

 流石にそこは、そんな間違いを起こすことも無かったらしく。

 ご想像の通り “あるもの” とは、

 自分の実兄であり、恋人であり、不倫相手の匠海だった。

 9週間ぶりに生で目にする兄は、こんな暗闇の中でも、白く滑らかな肌が美しくて。

 少々 寝乱れた黒髪は可愛らしく。

 そして、伏せられたままの長い睫毛と、その先ですっと美しい稜線を描く高い鼻。

(うわぁ~~、お兄ちゃんだぁ……っ うわぁ~うわぁ~うわぁ~っ か、可愛い寝顔♡♡♡)

 寝起きにも関わらず、6歳も上の兄の寝顔に全力で萌えていたヴィヴィだったが。

 しばらくすると、はたと正気に戻り。

 己の置かれた現状に、視線を走らせる。

 痩せてしまった身体には、上は白のロンTに、下はちゃんとスキニーパンツを履いている。

(……あ……れ……?)

 そこで脳裏に過ったのは、根本的な疑問。



 何故 自分はここで、匠海と寝ているのだろう――?


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