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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     



 昨日――9日(土)。

 女子FSが終了し、直後に執り行われた表彰式。

 確か、その後。

 自分はクリスを始めとするチームの皆と、ここ オフィシャル・ホテルのレストランへ “打ち上げ” という名のディナーに出掛け。

 そこで乾杯の為のシャンパンを、咽喉の渇きに任せて一気飲みしてから――

 記憶が無い。

 どんなに思い出そうとしても、それ以降の記憶が皆無なのだ。

「……~~っ」

(あ゛~~も゛~~っ)

 つい先程まで、この世の幸せを独り占めしていた愛らしい顔が、苛立ちを滲ませる。



 酒を呑んで、記憶を無くすとか。

 (間違い無く)同席していた双子の兄の手を、焼かせたのだろうとか。

 そんでもって、

 きっと前回同様、自分から匠海を呼び出したか。

 同じホテルに滞在していた長兄を、突撃訪問したのだろうとか。
 
 極め付けは、

 シャワーも浴びずに、惚れた男と同じベッドで爆睡するとか。

 なんかもう、自分は色々と終わっている気がする。

 人としても、女としても。



 眉をハの字にしながら、ゆっくりと身体を起こし。

 隣で眠っている匠海を起こさぬ様、キングサイズのベッドからそろりと抜け出る。

 ベッドサイドの時計を見れば、時刻はまだ4:30だった。

 足音を立てぬ様に寝室を出れば、隣のリビングルームには、自分のニットパーカーと鞄、ショートブーツがきちんと置かれていて。

 それを身に着けたヴィヴィは、ライティングデスクのメモを拝借すると、サラサラと書置きをし。

 また寝室へと戻り、元 自分が寝ていた枕の上にメモを置く。

 早朝のこの時間。

 匠海は爆睡しており、起きる気配は全く無かった。

(良かった……。

 今はちょっと……、顔を見られたくなかった……)

 久々に目に出来た、愛しい男の寝顔を目蓋の裏に焼き付け、ヴィヴィはスイートルームを後にした。



 最上階の7階フロアは、当たり前だが静かで。

 毛足の長い絨毯を、ペッタンコのブーツの裏で踏み締めながら、廊下を進む。


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