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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章

双子しかいない貸切状態のホテルのプールで、泳いではジャグジーで休み……を、繰り返し。
クリスとは一旦別れ、更衣室に戻ったヴィヴィ。
ロッカーから漏れ聞こえてくる微かな着信音に気付くと、慌てて手首に装着していた鍵で、己のロッカーを開いた。
『ヴィ~ク~ト~リ~ア~~』
出るや否やスマホの着信相手は、そんな不服そうな声を上げる。
「あ……起きたんだ? おはよう」
競泳用水着を纏ったまま、壁に掛けられた時計をちらりと仰ぎ見れば、時刻はもう7時前を回っていた。
『「おはよう」じゃありません。「黙っていなくなるな」って、何度言えば分るんだよ、お前は~~?』
寝起きのややしゃがれ声で、恨み節を発してくる上の兄に対し、
「ごめんね? だって、お兄ちゃん。とても気持ち良さそうに、寝てたから」
応える妹の声は軽く、悪びれた様子は一つも無い。
それどころか今朝、目にした兄の可愛い寝顔を思い出し、にやけ始める始末。
そして匠海も、今回は同じホテルに滞在しているからか、すぐに不服そうな声を改めた。
『よく寝れたか? 今日は大丈夫そう?』
「ありがとう。もう、ぐっすり。今までプールで泳いでたくらい、元気!」
いつもより長く6時間も爆睡出来たし、適度に身体も動かせてすっきりしたヴィヴィは、本心からそう答えたが。
『なに!? ……くそ。水着姿、見たかった……」
驚きの末、ぼそりと零された匠海の呟きに、思わずぽっと頬を赤らめたヴィヴィは、
「ばっ ……ばかぁ……っ」
愛らしい声を上げながら、誰もいない更衣室で己の貧相な身体を片腕で抱き締めたのだった。

