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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 抵抗空しく、そのまま駐車場に連行されたヴィヴィは、

 待たせてあったらしい、黒塗りリムジンの後部座席に放り込まれた。

「ほっほっほっ ワタクシに会ったが百年目。ここまで来たからには、いい加減に観念せ~~いっ!」

 娘の身体を中へ中へと文字通り押し込んだジュリアンは、勝ち誇った表情で、ヴィヴィの細い鼻を摘まんで勝利を宣言する。

 父とクリスが乗り込み、リムジンの扉が閉められる瞬間、

「~~~っっ!? 悪代官かぁ~~~っ!! かぁ~~~、かぁ~~……」

 ヴィヴィが叫んだその突っ込みだけは、やまびこ としてその場に虚しく響き渡っていたのだった。





 そうして拉致された結果、連れて来られたロンドン郊外の屋敷。

 以前よりは丸みの減った頬を、これでもかと膨らませたヴィヴィは、

 まだ15時だと言うのに呑み始めた両親と匠海夫婦、父方の祖父母、クリスとサンルームにいた。

 というか、父に片腕で腰を拘束されていて、逃げる事が出来なかった。

「ほら、ヴィヴィ。ダッドに注いで?」

 白ワインのボトルを手渡してくるグレコリーに、ヴィヴィは膨れっ面のままお酌をしていたが。

 それでも30分も経つと、いい加減にキレた。

「もう……っ クリスだって、いるでしょ?」

 自分の隣、知らんぷりして紅茶を飲んでいる双子の兄に、矛先をずらそうとしたが、

「クリスは本当に、孝行息子だからねえ~。松濤に戻る度に、私の晩酌に付き合ってくれるんだよ?」

 そう事実を並べられては、ヴィヴィは何も言い返せる訳も無く。

「……むぅ……」

 小さく口の中で唸ったヴィヴィは、押し黙ってお酌を続けるしかなかった。

「ああ、可愛い♡」

 もう酔い始めたのか、父は娘に頬擦りまで始める始末で。

 21歳にもなって、家族の前でそんな辱めを受けるのに耐えられず、必死にクリスに視線で助けを求めるが、

「ヴィヴィ、何事も諦めが肝心だよ……」

「………………」

 この屋敷に、自分の味方は1人もいやしない。

 到着して1時間、ヴィヴィはようやく現実を悟ったのだった。





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