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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 結局、1時間半も父のお酌をして解放されたヴィヴィは、

 ずっと視界の隅に入っていた匠海から逃れる様に、皆がいるサンルームを後にした。
 
 そして迷い無く向かった先は、広大な屋敷の裏庭。

 昨年の5月に渡英してから、双子(特にヴィヴィ)は、ここオーウェン邸をよく訪れていた。

 祖父母達に会いに来るのは勿論、日本人の祖母・菊子が世話をしているイングリッシュガーデンが大好きで。

 天気の良い日は外でお茶をしたり、ランチを採ったり。

 気温の高い日は、(自立式)ハンモックを庭先に出して微睡んだり。

 もちろん庭の手入れの手伝いもして、休日をのんびりと過ごすのが好きだった。

 裏庭の一角、透明なビニールハウスがポッコリ存在している場所がある。

 4㎡程の小さなそこに扉を開けて入った途端、充満する青臭い香りに、険しかった灰色の瞳がふっと細まる。

「す~~~、は~~~」

 大きく深呼吸したヴィヴィは、青々と茂る背の高い苗ににっこりと微笑んだ。

 そこにあるのは、トマト、トマト、トマト。

 トマトの苗ばかり。

 瑞々しい大玉、糖度の高い中玉、黄色の細長いプチトマト、に――。

「うわぁ……、ちびっこ、いっぱい!」

 初めて見る苗の品種に、ヴィヴィが驚きの声を上げる。

 日本に帰国していた25日間。

 自分がここにお邪魔していない間に植えられたらしい新苗に、ヴィヴィはしゃがみ込んでつぶさに見入る。

「ふふ、マイクロトマトよ?」

「グランマ!」

 掛けられた声に振り向けば、祖母がちょうど扉を開いて入って来るところで。

「可愛いでしょう? この前、園芸市場で見つけてね。ヴィヴィが喜びそうだから、植えてみたの」

 1粒が1cm位の小さな実が鈴生りになったそれらに、ヴィヴィは大きく頷く。

「すっごく可愛いっ たまに料理の飾りとして出てくるのは見た事あったけど、成ってるのは初めてっ」

 瞳を輝かせて立ち上がったヴィヴィが、ぴょんと祖母に抱き着く。

「ありがとう、グランマ~~っ」

「いえいえ」

 自分より背の低い祖母が、ぽんぽんと優しく背中を撫でてくれていた。

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