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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 余裕そうな兄の襟を両手で握ったのは、余裕を欠いた妹。

 目の前の美味しそうな唇にむしゃぶりつけば、すぐに薄いそれを割って舌が侵入してきた。

 舌裏をぺろりと舐め上げて挑発すれば、ソファーの背凭れに背を預けていた匠海が、ぐっと身を乗り出してくる。

 舌を擦り合わせ、絡ませ合い。

 時折角度を変えて互いを奪い合えば、静かなリビングルームに微かな吐息が漏れ始める。

 背中と腰を這い回る、大きな掌が心地良くて。

 もっとと強請る様に躰を擦り付ければ、応えて甘噛みされた舌に、華奢な肢体が歓喜に震え上がった。
 


 もどかしい。

 早く この男に穢されたい。

 肌という肌に、兄の舌と指を感じ。

 粘膜という粘膜に、兄という微粒子を取り込み。

 そして己の芯で、目の前の男の全てを感じながら、真っ白に汚されたかった。
 


 しばらくして離された、互いの唇。

 はあはあと乱れた吐息は、勿論2人分だった。

「シャワー、一緒に浴びるか?」

 兄の誘いにこくりと頷けば、またひょいっと抱っこされて。

「てか、軽っ こら。お前、やっぱり痩せただろう?」

「う゛……」

(だって、忙しかったんだもん……)

 ちゃんと食事は摂っていたのに、それ以上に脳と身体と精神を酷使した為、あれよあれよと色んなものが削ぎ落とされてしまったのだ。

「明日、たらふく食わせて太らせてやる」

 にやあと目の前で悪そうに笑う匠海に、ヴィヴィは「え~~」と困ったように笑ったのだった。



「素敵なドレスだな?」

 ファー・ショールを外したその下。

 深い青みのワンピースを、匠海はそう褒めてくれた。

「あ、うん。スポンサーさんから頂いたの」

 プリングルス オブ スコットランドの冬の新作。

 全面に同色の糸でイギリス刺繍が施されたドレスは、シンプルだけれども上質なもので、一目見て気に入った。

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