この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章

余裕そうな兄の襟を両手で握ったのは、余裕を欠いた妹。
目の前の美味しそうな唇にむしゃぶりつけば、すぐに薄いそれを割って舌が侵入してきた。
舌裏をぺろりと舐め上げて挑発すれば、ソファーの背凭れに背を預けていた匠海が、ぐっと身を乗り出してくる。
舌を擦り合わせ、絡ませ合い。
時折角度を変えて互いを奪い合えば、静かなリビングルームに微かな吐息が漏れ始める。
背中と腰を這い回る、大きな掌が心地良くて。
もっとと強請る様に躰を擦り付ければ、応えて甘噛みされた舌に、華奢な肢体が歓喜に震え上がった。
もどかしい。
早く この男に穢されたい。
肌という肌に、兄の舌と指を感じ。
粘膜という粘膜に、兄という微粒子を取り込み。
そして己の芯で、目の前の男の全てを感じながら、真っ白に汚されたかった。
しばらくして離された、互いの唇。
はあはあと乱れた吐息は、勿論2人分だった。
「シャワー、一緒に浴びるか?」
兄の誘いにこくりと頷けば、またひょいっと抱っこされて。
「てか、軽っ こら。お前、やっぱり痩せただろう?」
「う゛……」
(だって、忙しかったんだもん……)
ちゃんと食事は摂っていたのに、それ以上に脳と身体と精神を酷使した為、あれよあれよと色んなものが削ぎ落とされてしまったのだ。
「明日、たらふく食わせて太らせてやる」
にやあと目の前で悪そうに笑う匠海に、ヴィヴィは「え~~」と困ったように笑ったのだった。
「素敵なドレスだな?」
ファー・ショールを外したその下。
深い青みのワンピースを、匠海はそう褒めてくれた。
「あ、うん。スポンサーさんから頂いたの」
プリングルス オブ スコットランドの冬の新作。
全面に同色の糸でイギリス刺繍が施されたドレスは、シンプルだけれども上質なもので、一目見て気に入った。

