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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
トマト専用のミニ・ビニールハウス。
これは、祖母から孫娘へのプレゼントだった。
昨年に渡英してから、笑顔を手放してしまったヴィヴィ。
その孫娘が屋敷に来る度に、何故だか裏庭に植えていた1株のトマトの苗を、無心に「クンクン」している。
屋敷を取り囲むイングリッシュガーデンには、それこそ薫り高き様々な品種の薔薇があるというのに――。
それに目敏く気付いた祖母が「孫が1年中、トマトを楽しめるように」と、わざわざハウス栽培を始めてくれたのだ。
「ヴィヴィは本当に “トマトの苗” の匂い、好きねえ~?」
「うん。なんか、青々してて、瑞々しくて…… “生きてる” って感じ、大好き……」
まだ緑色のマイクロトマトの実を指先でつつきながら、ヴィヴィは頷く。
トマトの苗木には、独特の強い匂いがある。
果実の香りとは違う、葉や茎自体が発するもの。
どこか張り詰めていた緊張の糸を解いた様子の孫娘に、祖母は安心したように微笑み、
「さあ、ヴィヴィ。今日は何を手伝って貰おうかしらね?」
ヴィヴィに軍手を手渡しながら、祖母は悪戯っぽく笑う。
「あ、青虫退治だけは、カンベンしてぇ~~……」
そう情けない声を発した孫娘に、祖母は楽しくてしょうがないといった風に、声を上げて笑っていた。
夕刻が近付くにつれ、オーウェン邸にはぞくぞくと父方の親族が集まってきた。
階下では両親達が久方ぶりに会う皆と、挨拶とハグを交わしていた。
その一方、
割り当てられた客室で さっと汗を流したヴィヴィは、
バスタオルを巻き付けたまま、クローゼットの前に立ち尽くしていた。
昼に拉致され、ここに連れて来られた双子は、1週間の里帰りの準備など、前以って出来た筈も無く。
たぶん、リーヴが用意して車に積んでくれたのだろう。
目の前にきちんと掛けられている洋服達は、全てがスカートだった。
「………………」
昨日はデニムと長袖で乗り切ったものの、本日はフォーマルディナー。
皆が皆、ドレスアップして集う筈で。
(なるべく露出が少なくて、身体のラインが出ないもの……)
そう思いながら選んだのは、これまた “プリングルス オブ スコットランド” のもの。