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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     



 己を形作る細胞が、一瞬バラバラにされ。

 愛しい男を全身で受け止める という目的の為だけに、自分という器を再構築していく。

 兄の腰に絡めた、頼りない両脚。

 細い踵に伝わるのは、吐精をギリギリまで堪えんと耐えている、腰の強張り。

 そして、

 自分で慰める事すらままなら無い、この躰。

 その最奥まで、我が物顔で兄に蹂躙されると、

『何の為に、自分の命がこの世に繋ぎ止められているのか』

 それを、厭というほど思い知らされる。



 やがて、

 禁忌の領域で、熱く爆ぜた欲望。
 
 びくびくと震える剛直に、最後の1滴までもを扱き出さんと絡み付く媚肉。

 それを互いに感じ取り、共有するこの瞬間以上に “価値の有る瞬間” が在るのなら、知りたいとさえ願ってしまう。



 ただ、それは “瞬間”。

 熱した鉄が冷めるように、互いの熱も醒めていく。

 徐々に失望を滲ませる小さな顔。

 しかし、それを大きな掌に包み込まれれば、

 己を覗き込んでくる切れ長の瞳へと、縋り付かずにはいられない。

「ヴィクトリアっ」

「……~~っ ぉにぃ、ちゃ……っ」

 心許無い自分の居場所に、途端に不安が襲い掛かり。

 長い睫毛を濡らせたのは、懇願の涙。

「は……、離さない、で……っ」

 こんなにも、強く深く繋がっているのに。

 どうしても拭い切れない感情を持て余しているのは、きっとヴィヴィだけでは無い筈。

「馬鹿……っ 離してなんか、やるものかっ」

 苦しそうに呟き、唇を奪ってくる兄に、妹は必死に喰らい付く。


 
 何の障壁も無い空間よりも、

 蛇の寝床に似た、沢山の障害がある空間の方が、

 炎の燃え広がりが 速い様に。

 近親相姦 に 不倫 ――

 そんな恐ろしい障壁を受けた自分は、

 まるで “乱流現象” をなぞるかの如く、

 速く、

 深く、

 その行為に溺れていた。



 血の繋がった実の兄。

 そして、

 他人の夫である男との、

 この不逞行為――に







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