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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

「ところで、まずはあそこの眼鏡屋さんに行こうか」

「へ? どうして?」

 腕にぶら下がる様にくっついている妹を促しながら、お洒落な眼鏡屋に足を向ける匠海。

「いや……。だってさっきから、皆がお前のこと振り返ってて。気付かれたら面倒だろう?」

「え……? 何言ってるの? そんなのお兄ちゃん見てるに決まってるじゃない~」

 兄のまさかの鈍感具合に、ヴィヴィはそう突っ込んだが。

「俺なんか見たって、何も面白くないだろう? それにここ、試合会場の傍だから、昨日までの観客がまだいるかも……」

 結局、促されるまま眼鏡屋に入店したヴィヴィだったが、そこでも大分 “イタい子全開” だった。

「これ~! これ掛けて? ……わあっ カッコいい♡♡♡」

「いや……俺のじゃなくて、お前のを……」

 ヴィヴィの伊達眼鏡を買いに来たのに、何故か妹の玩具状態になってしまった匠海。

「じゃあじゃあ、これは~~?」

 黒縁眼鏡を手渡したヴィヴィに、匠海は苦笑いで装着し。

「いやぁあああんっ 可愛い♡」

「か、可愛い……?」

 また店内を物色し、今度持ってきたのはレンズが細めの銀縁眼鏡。

「ひゃぁああ~~っ 仕事出来そう!! 「篠宮専務。ハンコ下さい。キリッ」 なんちゃって~~っ♡♡♡」

 何故か、オフィスでのひとコマを1人で再現するヴィヴィに、

「……まだ、専務じゃありません……。それにハンコって……」

 匠海は「どこから突っ込んだらいいのだろう」と言いたげだった。

 おしゃれ眼鏡を掛けさせれば「鼻高い~っ」

 色付きレンズを掛けさせれば「やだなんかエロww(笑)」

 ――と、1人テンション高く はしゃぐヴィヴィ。

 結局、ヴィヴィの伊達眼鏡を選ぶのに、30分も掛かってしまい。

 そして何故か、匠海も色の薄いサングラスを買う羽目になった。



 さて。

 ヴィヴィの名誉の為に言い訳しておくと。

 兄妹は(フランスでは全然通じない)日本語で一連の会話をしていたので、

 匠海以外には “イタい子” 度合はバレていない筈。

 たぶん(笑)


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