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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 そのままホテルへと戻った兄妹。

 兄のスイート。

 そのリビングルーム、グレーのスウェード地ソファーで横抱きにされたヴィヴィは、未だべったりと匠海に甘えていた。

 じ~~と見上げれば、薄い唇を何度も啄ばまれ。

 背の中ほどまである金の髪を指で梳かれれば、

 思わずうっとりと、兄だけの香りのする首元へ鼻を擦り付けてしまう。

「ふ。甘えんぼさん」

「……ちがう、もん」

 図星を刺され、ふっと頭を引いたヴィヴィ。

 目に入った、兄が首から下げていたストールを むんずと掴むと。

 何故か、それを捩じって絡ませ始め。

「出来た」

 某俳優のトレードマークの “ねじねじ” を見事再現し、満足そうに薄い唇に弧を描いた。

「こら、悪戯っ子め」

 苦笑しながらも、妹の好きにさせる兄。

『中尾……彬だよ』

『おい、志乃~~』

 1人でモノマネを繰り広げては、ケタケタ笑うヴィヴィに、

「に、似てなさ過ぎにも、程があるだろっ あははっ!」

 とうとう匠海も破顔する。

 表情を鮮やかに見せる、大きな口。

 零れる白い歯は、素晴らしく爽やかで。

 そして、愛おしそうに細められる、切れ長の瞳。



 ああ、好きだな。

 私。

 この人が、大好きだな。



 同じく瞳を細めたヴィヴィが、ねじねじを手に強請る。

「ちゅ~~……」

 しかし、

「ん? ネズミか?」

 そう意地悪くかわした匠海は、辺りをきょろきょろと見渡していた。

「~~~っ」

 薄い唇を尖らせ拗ねた妹を、面白そうに見下ろした兄は、ちゅっと唇を啄ばみ。

 そして金色の前髪越し、おでこにも ちゅ~~と長いキスを落としてくれたのだった。





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