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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章        

「それにしても先生、また髪伸びましたね~?」

 最後に会った8月頭頃は、後ろで一括り出来るくらいだった黒髪の長さ。

 それが今では、肩下10cmまで伸びている。

「ん? ああ、伸びたな~」

 艶のある髪を無造作にハーフアップにした男を、ヴィヴィが下から覗き込む。

「あれですか? 本家に寄せてってるんですか?」

 結わえ直した金色の頭の中、某国の有名俳優を思い浮かべていると、

「ぶっ な訳ないでしょ」

 そう突っ込んだ白砂に、おでこをぺちっとやられた。

「ふう~~ん」

「あれ、お気に召さない?」

 今日着用するらしい黒の中折れ帽を、小粋にかぶってみせた白砂に対し、

 ヴィヴィの返事は容赦無いものだった。

「はい。私 実は、男性の長髪は苦手です」

(そういえば、フィリップも長いんだよな~~)

 肩上まである少し暗めの金髪が、緩やかに波打つ様を思い出すヴィヴィの傍ら。

「………………。明日、切りに行こ……」

 そう呟きながら広い肩を落とした白砂に、ヴィヴィは不思議そうに首を傾げたのだった。



 エキシビ用にフェンスを取り払われたリンク。

 その使用許可を20分貰い。

 ソロヴァイオリンの白砂と、特設ステージ上の15名程のオケ要員達と、初めてのリハーサルを行った。

 いつもSPで用いている音源とは、演奏スタイルが異なるし。

 振付のアントニオ・ナハロの事前許可を取ったヴィヴィは、エキシビ用に若干振付も変更しなければならなかった。

 それでも互いにその道のプロ(ヴィヴィはアマチュアだが)。

 すぐにぴたりと嵌った音楽家と演者は、皆が納得する形で本番を迎えられそうだった。



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