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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
リハを終え、傍の観客用椅子でスケート靴を脱いでいたヴィヴィの傍に、
「そういえば……。ヴィヴィ、知ってる?」
そんな気になるフリで話し掛けて来たのは、ヴァイオリンケースを携えた白砂。
「へ? 何ですか?」
俯いていた金色の頭が、ぴょこんと持ち上がる。
レギンスに包まれた細い両足は、昨日までの激戦で少々疲労していた。
「俺達、ちょっとした噂になってる」
「噂? 何のです?」
軽く首を傾げたヴィヴィに対し、返された答えは意外なもの。
「ん~? 俺とヴィヴィが “男と女の関係” なんじゃないかって」
「……~~っ Whatッ!?」
灰色の瞳が限界まで見開かれた驚嘆の表情に、見下ろす男の瞳は黒縁眼鏡越し、面白そうに輝く。
「ほら、2年前のEX『花のように』でも共演したし。俺 “ヴァイオリンの貴公子” 呼ばわりのイケメンだし?」
その指摘に、ヴィヴィは両腕で頭を抱き込み、苦々しげに呻く。
「ぐぁああ~~っっ そんな危険性、思い付きもしなかった!」
(うわあ、まじでっ!? 王子に加え、先生とも? もう勘弁してぇ~~(T_T))
それもこれも、ヴィヴィの人気に比例した周囲の関心の高さの表れなのだか。
如何せん、王子の一件で踏んだり蹴ったりだったヴィヴィは、もう男関係で騒がれる事はコリゴリだった。
「まあ、俺は全然いいんだけど。どっちかというと嬉しいし?」
そんな意味不明の返事を寄越す白砂に、しょぼくれた表情を浮かべたヴィヴィ。
「……ええと、エキシビ……CD音源で滑っちゃ――」
駄目元――と、そんな酷い提案をしてみるも(当たり前だが)自分の恩師は一刀両断してきた。
「駄目に決まってるでしょ! 俺様のヴァイオリンで、ヴィヴィを気持ち良~~くしてやるから。な?」
細い鼻の先をちょんと突いてくる白砂に、対するヴィヴィはといえば、
「……はぁ……」
そう気の抜けた声を唇から零すと、がっくしと項垂れた。
(もう……、今先生。マリア 渋谷のこと「猫っぽい、ぐっと来た」って言ってたくせに~~っ)