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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
贅沢な生演奏 かつ 男女の熱情を色濃く映し出したパフォーマンスに、場内は割れんばかりの喝采だった。
が――
黒の山折れ帽の影。
じっと熱心に女を見下ろしていた、男の顔を目がけ、
シルバーのブレードから飛び散った氷の屑が、降り注いだのは――
まあ……当人2人だけの “秘密” だ。
「……冷た……」
「あ゛……すんまそん(´・ω・`)」
結局、それに対する “意趣返し” もあったのか。
『Victoria Shinomiya――篠宮 ヴィクトリアさんの演技でした』
場内アナウンスが流れる中、四方へ向けて礼を贈って終ろうとするヴィヴィの背後。
黒衣装に包まれたその細腰を、ひょいっと抱き寄せた白砂。
その珍事件に、観客はどっと受けていたが、そうでなかった人間が約2名。
1名はもちろん、当人のヴィヴィで。
「おっ!? お礼させて下さい~~っ」
そして、もう1名はというと――
瞬時にリンクに乱入し、2人の間をべりっと引き裂いてくれた男。
双子の兄――クリスなのだった。
このクリスのシスコンぶりに、場内は大受けで。
『And Special Guest――Chris Shinomiya!
そして スペシャルゲストの、篠宮 クリスさんにも 大きな拍手をお送り下さい!』
なんて、異例のアナウンスまで入り。
何とか最後の礼を贈りながらも、美しく化粧の施された小さな顔には、微かな苦笑が浮かんでいたのだった。
ちなみに――
この歌詞には続きがあって。
『競馬場は もう充分
博打も辞めだ
写真判定なんか 二度と見ないぜ』
『だがしかし
もし 日曜日の競走馬が確実ならば
俺はもう一度
俺の全てを賭けるだろうさ
まったく……俺はどうすればいいのさ――』
――なんて。
競馬(と恋愛)にドはまりした、どうしようもない男の、
未練たらたらの歌詞で締め括られるのだった。