この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
メダリスト・オン・アイス 2023 のグランド・フィナーレを締めくくったのが、19時。
それからというもの、世界選手権2024 に出場する12名の選手達は大忙しだった。
会場の名古屋市総合体育館に設営された、特設キス・アンド・クライで、
男子シングル3選手による座談会
(進行:篠宮 クリス)
女子シングル3選手による座談会
(進行:篠宮 ヴィクトリア)
ペア、アイス・ダンス6選手による座談会
(進行:マリア 渋谷)
を、大会キー局との中継を繋ぎながら行い。
「あ゛ぁ……いっぱい噛んでもた……orz」
と己の進行の不出来に、頭を抱える暇も無く。
今度は、試合会場から4駅離れた名古屋駅にそびえ立つホテルへと急ぎ。
その会議室の1室で、東京の湾岸スタジオとの中継に出演した。
ようやく全ての関連行事を終え。
メインキャスターのアイドル・櫻井や、解説の先輩スケーター達にお礼と挨拶に回り。
「やれやれ、終わったね」と互いに肩の荷を下ろしながら、控室に続くホテルの廊下を皆と歩いていると。
「やあ、ヴィヴィちゃん。お疲れ様~。今日も とびっきり可愛かったよ~!」
そう気安く声を掛けてきた人物には、見覚えがあった。
「あ、岡さん。お疲れ様です。本日はお世話になりました」
黒スーツに身を包んでいたヴィヴィは、余所行きの微笑を湛え丁寧にお辞儀をした。
「さっきから視聴者から電話殺到でさ~。「もっとヴィヴィちゃん出して!」「喋らせて!」って。本当に凄い人気だね~?」
妙に間延びした喋り方で ぽんと肩を叩いてくる相手に、思わず薄い唇の端がひくついてしまう。
(そんな訳無いでしょ~~。男子3選手は特に人気高いし、女子は15歳の凛果ちゃんが「ニューヒロイン誕生」って騒がれてるんだから~)