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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章        

 目の前にあるのは、玩具箱を引っ繰り返したかの如き、見応えのある夜景。

 確かにそれらは、息を呑むほどの美しさだが。

「ぉに、ちゃ……っ み、見られちゃうぅ~~っ」

 名古屋駅にそびえ立っているのは、このホテル棟だけでは無かった。

 “ツインタワー” の もう片方であるオフィス棟は この部屋の後ろ側に位置しているのか、視界には高いビルは無いけれども。

「ふ。大丈夫だよ。地上から200mもあるんだから。ヘリでも来なければ、見られる事はないって」

「……~~っ」

(って事は、ヘリだったら覗けるんじゃないですか!?)

「へ、変態っ」

 後ろから抱き締めてくる兄をそう罵倒すれば、帰ってきたのは至極 意外そうな声。

「変態? どこが?」

「ろ、露出狂だなんて、知らなかったもんっ」

 細い顎に梅干をこさえたヴィヴィは、唇を真一文字に結んだ。

(え、えっちは2人でするもんだもんっ 誰かに見せるものじゃ、ないんだもんっ)

 薄い胸の中で正論を吐いた妹に、くつりと嗤った兄。

 華奢な躰に巻き付けていた両腕を解いたかと思うと、何故かゆったりとシーツに背を横たえ。

「そう? でも俺が見たいのは、こんなものじゃないよ」

「……え?」

 そう呟いた瞬間、ピッと軽い電子音が鳴り。

 それと共に、窓際にあったルームライトが柔らかに灯った。

「……? おにぃちゃん……?」

「ほら、窓、見てごらん?」

 心細そうに名を呼んだ妹に、兄はそう促し。

 そして目に飛び込んできた光景に、ヴィヴィは驚愕した。

「~~~っ!?」

 先程までは、煌びやかな夜景を望めた窓ガラス。

 それが今や まるで鏡の様に、ルームライトの光で浮かび上がった細い肢体を映し出していた。

「いっ いや……っ!」

 思わず顔を背けたヴィヴィに、起き上がった匠海が宥めようと、後ろから抱き直してくる。

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