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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
「ヴィヴィちゃん、珍しい。お化粧してる?」
氷の上以外は ほぼすっぴんの義妹が、フルメイクをしている事に気付いた瞳子が、息子を抱っこしたヴィヴィを覗いてくる。
「あ……、えっと、テレビ局を回って来たので、プロのメイクさんにして頂いたんです」
「そう。目鼻立ちがはっきりした美人さんだから、より化粧が映えて素敵ね」
にっこり微笑むその人の言葉には、嫌味など全く感じられなかった。
なのに、居た堪れなくなったヴィヴィが、逃げ場を求める様に腕の中に視線を落とせば、
「……りすぅ?」
幼児の小さな唇から洩れたのは、そんな意味不明の言葉だった。
「ん? リス、がどうしたの?」
首を傾げながら匠斗に問うも、焦茶色の瞳が見上げていたのは、隣に腰掛けたクリスだった。
「匠斗~。叔父さんにも、抱っこさせて~……」
寡黙な兄にしては珍しく、少々甘ったるい呼び掛けで甥の気を引けば、
ヴィヴィの腕から抱き上げられた匠斗は「キャッキャ」と明るい声を上げ、クリスの顔面をペタペタ触りまくり。
そして、また「りす」「りすっ」と連呼していた。
「あれ、もしかして? 「りす」ってクリスのことなんじゃない?」
真っ先に気付いたのは母・ジュリアンで。
その向かい、茶器を取り上げていた瞳子は、悪戯っぽく瞳を細めると思わせぶりに唇を開いた。
「うふふ。実は――」
義姉の説明によると、
今から3ヶ月前。
クリスが匠斗から「び(ヴィヴィ)」と間違って呼ばれ、困っているのを知った瞳子は、
以降 頻繁に、遠く離れて中々会えない義弟の写真を見せながら「これは、クリス君よ?」と、息子に憶え込ませたらしい。