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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章        

 だが今度は その膝の上で、シャンパングラスに小さな手を伸ばす始末で。

「わっ 匠斗、これはお酒だよ~。美味しくないよ~「まずいまずい」」

 焦るヴィヴィに笑った両親は、

「これくらいの年の頃って “大人のマネっこ” したがるのよね~」

「お前達は双子だから、匠斗の2倍は手が掛かったしな~」

と、娘と孫に相好を崩していた。

「びび、まんま」

 小さな両手で大人用スプーンを持った匠斗が、目の前の皿に乗せられていたサーモン・ウェリントン(英国料理・サーモンパイ)を、器用にすくい。

 己を抱っこしたヴィヴィへと ずいと差し出してくる姿は、筆舌にし難い程に愛らしかった。

「か、可愛い……っ」

「まんまっ」

 メロメロになっている叔母へ、大きな声でそう繰り返す甥。

 大きな口を開け差し出されたスプーンをぱくりと含めば、くりんくりんの瞳を輝かせる匠斗は なんだか誇らしげだった。

「ん~~、ありがとう、匠斗。美味しいよ~♡」

 スプーンを取り上げ ぎゅうと抱っこすれば、前の席のクリスが物凄く羨ましそうに自分達を見ていた。

「匠斗、今度はクリス君にも「あ~ん」してあげて?」

 瞳子のその言葉に、黒い小さな頭を頷かせた甥っ子はヴィヴィの手を離れ、双子の片割れの方へとパタパタ駆けて行った。

「あら、瞳子さん。今日は休肝日?」

 いつもは酒を嗜む息子の嫁が、今日はミネラルウォーターにしか手を付けていないのに気付き、

 不思議そうに問い掛けたジュリアンに、瞳子は「ええ、まあ」と微笑んでいた。

「そう。じゃあ、ヴィヴィ、代わりに たんと飲みなさい」

 矛先を我が娘へとずらした母に、

「代わり……? まあ、いいけど」

 苦笑を浮かべたヴィヴィは、シャンパングラスの中身をくいと開けると席を立ち、向かいの母の席へと寄る。

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