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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
「ふふ、冗談よぉ~~。ヴィヴィ、偉いわよ~。さすが私の娘! 全日本 優勝おめでとうっ」
そう手離しで褒めながら、どぼどぼとシャンパンを注いでくるジュリアンに、
その中身を一瞬で飲み干したヴィヴィは「ありがと~」と言いながら、腰掛けたままの母親にハグをした。
「ほら、クリスも いらっしゃいな」
息子を手招きした母に、クリスもシャンパングラスを手に立ち上がる。
「貴方のことは な~~んにも心配してなかったけれど、FSの『イングランド狂詩曲』。一層 精度に磨きがかかっていて、本当に素晴らしかったわ!」
「ありがとう、マム……」
父ともグラスを交わしながら、ハグをして健闘と再会を喜び合っていると。
娘のグラスにシャンパンを注ぎながら、グレコリーが残念そうに続けた。
「それにしても、匠海は遅いなあ~」
本人からは「1時間遅れ」の詫びの連絡が入っていたが、時刻は それをとうに過ぎていた。
「きっと、クリスマス渋滞に はまってるじゃない?」
金色の頭を微かに傾げながら、フォローしたヴィヴィに、
「今日は、五十日(ごとび)だし……」
クリスもそう続けた。
(ってことは、お兄ちゃんが着いてからも、延々と酒盛りが続くのか……)
少し呑むペースを抑えた方が良いかも……と算段を付けながら、自分の席へ戻る途中。
「あの、匠海さん、遅くなりそうですし……」
そう口を開いた兄嫁に、皆の視線が向かった。
「今夜は私達から、皆さんにクリスマス・プレゼントがあるんです」
家族一人一人の顔を幸せそうに見つめた瞳子の姿に、
虫の知らせか――
ライトグレーのワンピに包まれた胸に、不穏な霧が立ち込め始め。
「え? クリスマス・プレゼント?」
「おやおや、何だろうね?」
愉しそうに顔を見合す両親の声を、どこか遠くに感じながら、己の席へと腰を降ろした。