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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
そして、残酷な運命は、
1分前まで「早くお兄ちゃんの顔を見たいな~」と、浮かれていた愚かなヴィヴィへと、
正義の鉄槌を下したのだ。
「ふふ。実は……ここにいるんです、2人目」
オフホワイトのスカートに包まれた、まだ平らな腹を恭しく撫でる権利は、
目の前の、
この義姉にしか有り得なくて。
「え? 2人目って、ま、まさか……!?」
「ええ。匠斗の弟か妹です」
“母親の表情” を浮かべた正妻――瞳子は、ふんわりと微笑み。
対し、
“夫の不義の相手” たるヴィヴィは、ただ茫然と俯いた。
「まあ~~っ!! 凄いわ!」
「おお、また孫が抱けるのか~~」
耳を覆う金の髪越しにも はっきりと届く、活気を帯びた両親の声。
「おめでとうございます……」
義姉の懐妊を祝う、双子の片割れの誠実な声。
それらを聞き留めながらも、何だか頭が重くて。
どうしても顔を上げられなかったヴィヴィの元へ、
てとてとと歩み寄る影が一つ。
「びび」
元気一杯 両腕を伸ばして抱っこをせがむ、小さな命。
今すぐ応えてあげたいとは思うのに。
ワンピの上、無意識に握り込んでいた拳は、硬すぎて。
「……びび?」
叔母の様子が常と違うと判るのか。
微かに薄い眉を顰めた甥に、ヴィヴィは震える息を細く吐き出し。
ゆっくりと拳を開いた。
「……おいで、匠斗……」
太ももの上に抱き上げた甥っ子は、とても暖かくて。
まるで羽毛を抱いている様に、どこまでも軟らかくて。
「良かったね……。匠斗は “お兄ちゃん” になるんだね」
ヴィヴィの言葉が理解出来ないのだろう。
腕の中で不思議そうに首を傾げた匠斗の額に、ゆっくりと薄い唇を押し当てる。