この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章        

 グリッサンドと、激しく打ち込まれる甲高い旋律との応酬。

 そして、

 執拗に繰り返される、6度の音符の上下。

 どこかサイレンを思わせるその音色は、

 不安を煽り、増幅させ。

 けれどそのまま突き放し、聴く者を “己との葛藤の淵” へと追いやる無慈悲な旋律。

 それらを奏でる度、ヴィヴィはいつも想うのだ。



「この世に神などいない

 正義しか持たない人間なんて存在しない

 そして

 自分も その内の1人なのだ」

 ――と



 ソナタは荒々しい冒頭の主題へと舞い戻る。

 強靭さ。

 残忍性。

 よりどころのない不安。

 甘さのないリリシズム(抒情性)。

 そして、

 カタルシス(浄化)。

 それら相容れ無ぬモノ達を併存させながら、一切の渋滞感無く纏め上げ。

 8分半の第一楽章の締め括りは、

 鍵盤の左隅――最低音に上半身ごと覆い被さり、終わりを迎えた。



 細い左腕の横。

 事切れ ごとりと落ちた金の塊。

 さすれば、

 辺りに満ち始める “静寂” という名の最低最悪の騒音。



『私をお兄ちゃんの愛人にして下さい』



 無慈悲に迫りくる現実に、

 丹念にマスカラが塗り込められた睫毛が、

 その重さに耐えられず、

 億劫そうに伏せられていく。





 嗚呼――

 出来る事ならば、

 この余韻だけを引き摺りつつ、

 幸福だった頃の淡い記憶に埋もれながら、

 跡形も無く、

 この場から消失してしまえれば。



 こんなに楽な終焉、

 他には無かっただろうに――








/1163ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ