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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章        



『2人目は可愛らしい女の子がいいですね。ふふ、匠海さんにおねだりしてみようかしら?』



 関係無い。



『きっと、匠斗は匠海さんに似たんだわ。私が幼児の頃って、凄く引っ込み思案だったらしいの』



 だから、関係無いって。



『ふふ。実は……ここにいるんです、2人目』



 本当に、私には何の関係も無いの。





 考えても仕方の無い事。

 思い悩んでも無駄な事。

 それら頭の中に浮かぶものを ひたすら握り潰し、片っ端から追い出していく。

 深く掘り下げても、自分が惨めになるだけ――

 そう、解っているから。



 選択したのは自分。

 決断したのも自分。

 ならば、

 自分が成すべき事は “愛する男の事だけ” を考える――それだけだろう?



「…………ふぅ」

 気持ちを切り替える為、薄い唇から大げさに息を吐き出し。

 そして、微かに首を傾げた。

(お兄ちゃん……。どうするんだろ、今日……)

 義姉と甥が ここに泊まるかどうかは知らない。

 だが匠海は、



『今夜 松濤に泊まるんだ

 少しでも一緒に過ごせると嬉しい』



 そう、昼にメールをくれていた。

 ちらりと左隣へ続く扉を見やる。

 思えば 物心付いた頃から、自分はずっと その先へと続く扉を見つめ続けてきた。



 小さな頃は、早く学校から帰って来て遊んで欲しくて。

 恋心を自覚してからは、互いの間に立ちはだかる障壁として。

 そして、

 両想いの恋人となってからは、ただただ幸福をもたらしてくれる扉として。

 だが、それは今や、

 幾つもの裏切りと咎を自覚させる境界線へと、成り果てていた。



 こちらからは 開けられぬ扉。

 こちらからは かけられぬ電話。

 こちらからは 望んではならぬ様々な事。


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