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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
「………………」
ああ、駄目だ。
今日の自分はどうかしている。
黒のハイピングから覗いた両手を硬く握り締め、痺れる第二関節を誤魔化し。
深く呼吸を繰り返し、しくしく軋む胸骨に新鮮な空気を与え慰める。
(早く……来ないかな……)
中々コントロール出来ぬ己の気持ちを、匠海を感じる事で切り替えたかった。
あの暖かな抱擁を受ければ、大丈夫だから。
全身で兄を感じれば、それでリセット出来る筈だから
(だから……早く……早く来て、おにいちゃん……っ)
大きな灰色の瞳が苦しそうに歪み、薄い唇は堪える様に真一文字に結ばれる。
そのまま まんじりともせず、白革のソファーで待ち続けたヴィヴィ。
時刻は後数分で、クリスマスの翌日へ変わってしまう頃だった。
小さく「コンコン」とノックされた扉に、ぱっと振り向けば、
向こうから静かに開けられたそこには、待ち望んだ人が立っていた。
「ヴィクトリア……」
自分を呼んでくれた声は、少し語尾が震えていて。
すくっと立ち上がったヴィヴィは、白ガウンの裾を翻しながら扉へと向かった。
傍に寄れば、待ち侘びていた兄の表情は常より強張っていて。
いつも滑らかに動く大き目の唇は、続く言葉を躊躇っているようだった。
だから、
白フードの下、愛らしく頬を膨らませたヴィヴィは、
思いっきり拗ねた声で発したのだ。
「もう~、遅いよ、お兄ちゃん! 折角お風呂で暖まったのに、冷えちゃったよぉ~」