この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
「もう~、指先 冷えちゃったよ~」
漆黒のベッドに飛び乗ったヴィヴィは、白のガウンから覗く両の指先を「は~」と暖かな呼気で暖め。
フードを被ったままの金の頭を、拗ねた様に傾げてみせる。
「ごめん……」
キングサイズの傍で立ち尽くす兄の表情は、未だ硬くて。
ベッドサイドのランプに浮かび上がる顔色は、常より白く見えた。
「そう思うなら、早く温めて?」
細い両脚を投げ出した横、ぽんぽんと叩いて誘った妹にも、匠海の態度は頑なだった。
「……本当に――」
咽喉が詰まるのか。
そこで言葉を区切らせた兄は、それでも真っ直ぐに妹の事を見据えていた。
「本当に、何の言い訳も出来ないよ。申し訳無い」
さらりと流れ落ちる黒髪。
自分に頭を垂れる兄なんて、見たい筈も無く。
先刻言われた言葉が、細い眉を強張らせた。
『怒りなら、俺にぶつければいい』
怒ることが、正解だったのかもしれない。
詰られたほうが、兄は楽になれたのかもしれない。
けれど そうすれば、
今以上に 自分が惨めになりそうで。
「………………」
薄らと開かれていた唇は、ただ静かな呼吸を繰り返すだけ。
己の愛する男が懺悔し続ける姿から瞳を反らせたヴィヴィは、ベッドサイドに手を伸ばし。
微かな物音のみを立て、唯一の光源であったランプを消灯した。
突如 暗闇が降りたそこに、匠海が身じろぎした微かな気配。
「来て……?」
「……ヴィクトリア……?」
当惑の声を寄越す相手にも、ヴィヴィはありったけの甘えた声音で強請るだけ。
「早く……。早くヴィヴィのこと、抱き締めて?」
何も見えぬ空に両腕を伸ばせば、スプリングを軋ませながら上がってきた兄に、指先が触れて。
手探りで妹を探し出した匠海は、静かに華奢な躰を抱き寄せた。