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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
首筋に埋められた顔に、細い鼻をそっと寄せれば、
鼻腔を擽るのは、求め続けた兄だけの香り。
「お兄ちゃんの、匂い……」
暗闇の中。
何も映さない大きな瞳が、空を見つめて幸福そうに細まる。
「お兄ちゃんの、指……大きな手……」
もっと 私を なぞって?
「お兄ちゃんの、あったかい唇……全部、全部、大好き……」
だから、
もっと もっと ヴィヴィを さすって?
「ヴィクトリア……」
お兄ちゃんなら、全部 大好き。
お兄ちゃんになら、何をされたっていい。
そう思う気持ちは、今でも変わらないのに。
「……だ……、だぃす、き……っ」
(大好き――なのに……)
どうして自分は、上手く立ち回れないのだろう――?
堪え切れずに漏れた嗚咽。
それは、もうどうやっても抑えられなくて。
ガウンの裾から忍ばせた手で、太ももを撫でさすっていた手が止まり。
直後、
灯されたベッドサイドのランプを避けるように、両腕で庇った小さな顔。
「……ごめん……」
匠海が発したその言葉には、自責の念が滲み出ていた。
歯を噛み締めたまま発した様なその声に、
目の上に両腕でバッテンしたまま、ヴィヴィは小さく首を振った。
「……ち、がぅ……」
違う。
そうじゃないの。
お兄ちゃんを責めてるんじゃないの。
「ヴィヴィ……?」
だって、
妻子ある身の匠海からすれば、第二子をつくることは義務であり権利であり。
それは、誰からも責められるべき事じゃない。
「……謝る、のは……っ わ、私の……ほう……」
不恰好に詰まる言葉。
それは、ヴィヴィの本心だった。
「え……?」