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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
投げ出したままの両脚を引き寄せたヴィヴィ。
ただただ自分を保つ為だけに、金の頭を垂れた。
「……私と、別れて下さい……。おねがい……お願いします」
「………………っ」
妹からのまさかの離別の言葉に、兄が息を呑んだ気配は伝わるものの、
黒シーツを握り締めた両手に力を籠め、必死に言葉を絞り出す事しか出来なかった。
「……これ以上……自分の醜いところ、曝け出したくないの……」
『自分がいなければ「幸せじゃない」と
そう兄が言うのなら
自分は兄の傍にいる』
そう決心したのは自分なのに。
「……これ以上、自分を嫌いになったら、もう、ちゃんと立てない……」
『どれだけ 嘘吐き男でも
どれだけ 酷い男でも
振り回されて
奪い尽くされて
最期には放り捨てられると
そう
解り切っているのに』
それでも、愛し続けると誓った事すら、
己の身 可愛さに貫けなかった。
「ごめんなさい……おにいちゃん……」
憎んでくれていいよ。
軽蔑してくれていいよ。
だって今の自分は、
最愛の男の “幸せ” すら
願えない女に成り下がったのだから――
「………………」
妹の言動が あまりにも想定外のものだったのか。
茫然自失状態で瞬きすらせぬ匠海に、ヴィヴィは少しだけ安堵を覚えていた。
なんだ。
私って、
“何をしても受け止めてくれる 器のデカい女”
そう、
お兄ちゃんに買い被られるくらいには、敬愛を受けていたんだな。
長い脚を滑らせベッドから降り。
振り返った先――先程まで自分が居た場所に、視線を落としたままの匠海に、
意識してしっかりした声で離別を告げた。
「さようなら」