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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第11章
開錠し退室した寝室から、兄が追ってくる気配は無かった。
境界の扉を開け、再度足を踏み入れた私室のリビングは、数分前よりも更に冷え込んでいた。
「……なんで、お酒なんか、呑んじゃったんだろう……」
冷える指先を握り、リンクに行けない今の状態を悔やむ。
何だか。
今立っている場所が、現実じゃないような、
夢でも見ているような、
地に足が着いていない心地だった。
たった数時間で、幸福の絶頂から不幸のどん底へと突き落とされ。
少々頭と心が追い付いていないらしい。
まあ全て、自業自得なのだが。
だが、
先程 自分が発した言葉を撤回する気は、更々無かった。
唯一 後悔することといえば、
兄にあんな苦しみを与えてしまったこと。
そして、
どうしても告げられなかった ある一言――
『幸せにならないと、絶対に許さない――っ』
19歳の自分なら言えた言葉が、悲しいかな、
変に大人になってしまった自分からは、捻り出すことがままならなかったのだ。