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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
「クリス君はどうですか?」
「……グラパラリーフ……? さっぱりしそう……」
“食べられるサボテン” と言われるグラパラリーフは、青リンゴのようにすっきりした酸味が特徴で。
「それだって野菜じゃんっ」
双子の兄の挙げた食材に、ぺちっと叩きながら突っ込んだヴィヴィ。
「ばれたか……。じゃあ、キウイで……」
「あ、それ、絶対美味しいね!」
赤毛のアンばりのカントリー娘が にっこり微笑む姿に、無表情のまま頷き見つめ返すクリスを、
その場に居た数十名のスタッフが「なんか、この双子……和むわあ」と ほっこりしていた事など、
当の兄妹は全く気付いていないのだった。
CM撮影とポスター撮影を終えれば、日はとうに陰り夜になっていた。
日新食品グループの社長に招待され、他社員と共に会食に出掛け。
2次会はカラオケへと雪崩れ込んだ一向。
双子は何故か、振付もバッチリ合ったピンクレディーの『UFO』を踊り狂い。
年配の社長を、大層ご機嫌にさせたのだった。
美味しい懐石料理にお酒、お世話になっている社員達とも親交を深め、
手配されたハイヤーに笑顔で乗り込んだ双子と(日本滞在時だけ世話になっている)マネージャーの牧野。
「お疲れ様でした~」
「御馳走様でした、楽しかったです!」
「お世話になりました……」
「また、CMが完成次第、ご連絡差し上げます」
それぞれ挨拶を交わすと、ハイヤーは静かに銀座の街へと走り出した。
「お疲れ様、二人とも。明日も朝早いから、真っ直ぐに松濤に送るね」
助手席の牧野マネージャーの声掛けに「あ……」と短く呟いたヴィヴィ。
「ん? どこかコンビニでも寄るか?」
首を捻り後部座席を振り返った牧野が目にしたのは、先程までの元気一杯のヴィヴィとは違った。
暗い車内、強張った表情を浮かべるヴィヴィに、心配そうに言葉を続けようとした牧野。
しかし、それは一瞬だがクリスの方が早かった。