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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 時は年末。

 スマホの大掃除と言わんばかりに、もう目を通す事も無いであろうメッセージ等も、併せて削除すれば、

 張り詰めていた気が緩んだのか、途端に眠気が襲ってきて。

「……ちょっと、横になろ……」

 しぱしぱと危うい瞬きを繰り返す主の言葉に、書類を革のバインダーに挟んだ執事は、

「ええ、それがいいですね」

 そう言いながら踵を返し、一足早くベッドに向かう。

 真っ白のキングサイズのベッドには、ワッフル素材のベッドカバーが掛けてあり。

 それを手早く剥がしていた執事は、数秒後、

「とりゃっ!」

 という意味不明な掛け声と共に、何故か顔からベッドに突っ伏していた。

「……――っ!?」

 漆黒のお仕着せの背中に思いっきりタックルし、見事成功させたヴィヴィは、

 ずれた銀縁眼鏡がコントみたいな朝比奈が、こちらを振り返った途端、

「隙あり~~」

 そう、物凄く満足気に にやあと笑ったのだった。

「な……何をしているんですか、お嬢様っ!」

 突拍子も無い主の悪戯を諌めてくる執事にもヴィヴィは気にせず、腰に回した両腕で その背中をぎゅうぎゅうと抱き締めた。

 広くて暖かなそこは、意外と逞しくて。

 小さな頃は よくおんぶを強請った、朝比奈の背中に懐かしさが込み上げる。

(まあ、お馬さんごっこも強請って、結構困らせた覚えもあるけど……)

「うふふ~。ねえ、ちょっと、添い寝してよ~?」

 昔を懐かしみ、甘えた声でお願いすれば、

 腰に絡まった細い両腕をやんわり解いた執事は、困り果てた様に微笑んだ。

「しょうがないですねえ。もう21歳なのに、私のお嬢様は本当に いつまでも甘えん坊で……」

「むぅ……」

 相手の言い分がもっとも過ぎて、ただ薄い唇を尖らせると。

 意外にも目の前の男は、貧相なヴィヴィの身体を しっかりとその胸に抱き寄せてくれた。



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