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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 イタリアから英国に戻ってからの日々。

 ヴィヴィの生活パターンは、下記の繰り返しだった。

 朝練 → 家で休憩 → 夕方~夜まで練習

 毎日10時間、陸上ではバレエと体幹トレーニング、そして氷上でもみっちりレッスンを受け。

 その合間合間には自主学習や楽器を触ったり、寮に残っている学友達と遊んだりして、長い冬休みを過ごしていた。



 今日もランチを摂ってすぐ防音室へと籠ったヴィヴィは、一心不乱にグランドピアノに向かっていた。

 白黒の鍵盤上、早送り画像の様に忙しなく走る細長い指先。


 フレデリック・ショパン作曲

『エチュード 第4番 嬰ハ短調 Op.10-4』


 譜面を見れば、16連符がびっしりと並び。

 早いパッセージは左右とも、アルペジオ(分散和音)、スケール(音階)、オクターブ、トレモロ奏法と、事細かな技量を要求してくる為、

 昨今、ヴィヴィは指慣らしとして取り組んでいた。

 ただエチュード(練習曲)といっても、第4番は演奏効果が非常に高く。

 1分50秒程の短い曲が、嵐の様に駆け抜けるさまは「SO COOL!」の一言に尽きる。

 1秒たりとも気を抜かず弾き終えた直後、小さな顔にも「やってやったぜ!!」感が ありありと浮かんでいたのだが。

 しかし冷静に演奏を振り返ってみれば、作曲家の指示を見落としているところがチラホラあった。


―――――
※エチュード 第4番 嬰ハ短調 Op.10-4
https://www.youtube.com/watch?v=mUVCGsWhwHU
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