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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
フォルテ(強く) と ピアノ(弱く)。
狭いポジション と 広いポジション。
スタッカート(音を短く切って) と レガート(音を滑らかに繋いで)。
様々な要素を(上掲の様に)相反する対象で捉える事により、一つ一つのテクニック効果を意識させるように作られたエチュード。
(はぁ……。今みたいな雑なタッチだと、確実に止められただろうな……)
前のめりに譜面を覗き込みながら、赤ペンで気になる場所をチェックしていけば。
(ここも……。ああ、ここも、運指 間違ってた……)
全然「やってやったぜ!!」じゃなかった と細い肩を竦めながら、赤ペンのキャップを閉じる。
恐ろしく耳の良い長兄は、どんなに速く高度な難曲でも きちんと聴き分け、的確に指摘してくるから。
そんな時の匠海の苦笑いを思い浮かべ、ふっと緩んだ口元。
しかし、数秒後。
カラン……。
譜面台に滑り落ちた、赤ペンの軽い音。
そして、
バツが悪そうに歪められた灰色の瞳。
「………………」
しばしの沈黙の後、空気を変える様に大きく吐き出された深い息。
背凭れの無い長椅子の上、ぐるりと金の頭を回し。
気持ちを入れ替えて、再度、漆黒の打弦楽器に向かった。
目の前に広がる長い鍵盤。
その左端――低音域に細い両掌を添え。
深呼吸を一つ。
そうして防音室に響き始めた低音は、野太さとゴツさを誇っていた。
フランツ・リスト作曲
『ピアノ独奏・死の舞踏(「怒りの日」によるパラフレーズ)』
―――――
※リスト「死の舞踏」:元はピアノ独奏を伴う管弦楽曲
https://www.youtube.com/watch?v=MVzmw9nGLGc
「ソ-ファ-ソ-ミ-ファ-レ-ミ- ソ-ソラソファミレ ファ-ソ-ファ-ミー」て聞いた事あるかも
ちなみに双子PGで滑ったのは、サン=サーンスの「死の舞踏」
木琴が骸骨音を奏でるやつでしたね~懐かし