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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
左手の和音に浮かび上がるのは、右手で紡ぎだされた主題――グレゴリオ聖歌「怒りの日」の不気味なフレーズ。
だらりと垂れた金の頭。
己の手の甲を睨み付ける瞳は、若干虚ろながらも気迫を滲ませ。
これから同フレーズを5パターンに変奏していく、その緻密な計算を脳裏に立てていた。
だから、気付かなかった。
あまりに没頭し過ぎていて、気付けなかった。
鍵盤の右端――高音域。
そこに、
有る筈の無い “生首” があった事に――
きっちり、5秒間の静寂。
軽い瞬きを1つ。
ややあって、
みるみる見開かれていく、それでなくとも大きな瞳。
そして、
「……ふっ!? ふぎゃぁああああああああ~~~っっ!!!!!!」
防音室に轟いたのは、
この世の終わりに耳にするには相応しそうな、とんでもない雄叫びだった。