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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
例えばそれが、
自分と瓜二つの双子の兄の “頭” だったらならば、
ヴィヴィだって すぐ我に返り、笑顔を零していただろう。
しかし、
鍵盤の上に ごろんと転がった “それ” は、
美術室の壁際に並ぶ、首から上の石膏像――と見紛う容貌で。
かつ、完全なる白目を剥いている有様。
声の限り絶叫したのち、思わず背後へ仰け反った華奢な身体は、
当然 背凭れの無い長椅子から ずり落ちたが。
咄嗟に その細腰を絡め捕った “生首野郎” のお陰で、
床に叩き付けられる惨事だけは、何とか回避出来た。
「ん゛な……っ!? な、なななっ 何してんのぉ~~っっ!!!!」
泡を食ったヴィヴィが喚くも
「ただいま~❤ 俺のヴィ~~。元気にしてた~?」
左腕で抱き留めた腰に、更に右腕を回してきたゴ○ブリ王子。
「……~~っ 誰が、誰の、ヴィーだってぇ~~っ!?」
「“キミ” が “俺のヴィー” 、もとい、俺のヴィーナス」
腕の中の女にずいと顔を寄せて来るフィリップに、
我に返ったヴィヴィは相手の胸に両腕を突っ張った。
「……っ もうっ 馬鹿言ってないで離してっ!」
(顔が近いっ ていうか、腰を離してくれ~~っ!!!)
「え~~。転げ落ちない様に助けてあげた命の恩人に、なんて口のきき方」
王子が不服そうに眉を跳ね上げれば、その真下にある鮮やかな碧眼の目尻も上がって。
男の嫌味なくらいな彫りの深さに、3/4は英国の血が入っている筈なのに――なヴィヴィは、なんかイラっとした。
「~~っ 椅子から転げ落ちただけで死ぬ訳ないでしょっ!」
「打ち所悪かったら、あの世行きでしょうが」
追及してくるフィリップにも負けず、言い返すヴィヴィ。
「受け身くらい取れる!」
こちとら毎日リンクで ごろんごろん転んでるんだぞ?
いわば “受け身の達人” といっても過言ではない。
うん、たぶん。
「でも肘や手首骨折するかも。そうなったらピアノはもちろん、スケートも休まなければ ならないでしょうが」
「………………」