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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
ああ、もう。
なんだろ。
この男と言い合ってると、
イエス・キリスト(外見だけ)にキャンキャン喚いてる駄犬の気分になってくるわ。
先程までの勢いは何処へやら。
ぐったり うな垂れたヴィヴィから ようやく解かれた、腰を捕らえていた両腕。
「無視は辛いよ、ヴィ~~」
「………………」
長椅子の端に腰掛けてきた男に対し、これ以上 傍に寄せたくない女は すっと席を立った。
「ヴィ~~、驚かして悪かったって。機嫌直して? な?」
単なる悪戯心だったのだろうに。
えらくご立腹(?)のヴィヴィに謝罪してきた王子に、流石にこちらも過剰に反応し過ぎた気になってきて。
そして、タイミング良く入室してきた朝比奈に、
上がり気味だった両肩を落としたヴィヴィは、フィリップを振り返った。
「……はぁ……。ていうか、もう戻ってきたの? 皇族の年始行事とかあるんじゃないの?」
昨年のクリスマス目前。
いつまで経っても祖国に戻ろうとしない王子は、
オックスフォードで彼の身の回りの世話をしている付き人に、引き摺られるようにモニャコ公国へ連れ戻されて行った。
てっきり、1月の最終週から始まるヒラリー・ターム(第2学期)直前に、英国へ戻ってくるのだと思っていたのに。
「あ゛~~、最低限だけ出席してきた。も~~、おべっか かったるくて逃げてきたけど」
至極 面倒臭そうに、肩上まである金の髪をぐしゃぐしゃ掻き回すフィリップ。
どうやら たった2週間の里帰りで根を上げ、トンずらしてきたらしい。
ちなみに本日は、まだ1月4日である。
「………………(-_-)」
(もう、何も言うまい……)
防音室のソファーセットで茶の用意中の執事の元へ向かえば、王子も追ってくる。
「ほら、ヴィー。未来の皇太子妃がそんな ぶっちょう面してちゃ、ダメでしょ?」
背後から掛けられた意味不明の言葉に振り返った顔は、確かにぶっちょう面だったけれど。