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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

「暗い曲ばっかり弾いてたら、気持ちまで暗くなるぞ~?」

 続けられた ありきたりなセリフに、ワンピに包まれた両肩がみるみる脱力していく。



 ダークサイドに浸りきってる自分に、何を今更……。

 僅か10日前。

 “不倫相手に第二子誕生” の朗報(?)を齎された女が、

 幸せ一杯・底抜けに明るい曲を奏でている方が、

 ある意味 “ホラー” でしょうに。



「……じゃあ、どんな曲を弾けばいいの?」

 というか。

 どんな曲を聴かせれば、とっととお帰り頂けるのでしょうか?

「あ、あれ弾いてよ。ヴィー17歳の時のSP。え~と『喜びの島』……だっけ?」

 「この年末年始、ヴィーの過去の試合動画、観尽してたんだよ~」と嬉しそうに続ける相手に、

「無理」

 ぴしゃりと拒絶したヴィヴィ。

「なんでさ? あのSP、とても可愛かったのに」

「どうしても」

 その後「お願い」と両手を合わせ、下手に出たフィリップにも、

 ヴィヴィは「あの曲だけは無理」と、取り付く島も無かった。

「え~~、じゃあ……」

 不承不承、代わりのピアノ曲を探す王子に、

(『LULU』弾いてやろうかな……?)

 『死の舞踏』より更に難解で、おどろおどろしい曲名を思い浮かべるも。

 薄い唇から「ふ~~」と長い息を吐き出したヴィヴィは、静かに鍵盤に向かった。

「……綺麗な曲だね?」

 モニャコ公国の王子(しかもフランス育ち)のフィリップが、知る筈も無いその曲。

「THE “日本のお正月”」

 にんまり笑みながら、音を紡ぎ出すヴィヴィ。

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