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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
「なんて曲?」
興味深そうに手元を覗き込んでくる男に、
「……ひ~~み~~つ~~」
ささやかな意趣返しをする女は、結構愉しそうだった。
「え~~」と不服そうな声を上げる王子を見兼ねたのか。
茶器を片していた執事が、静かに口添えした。
「『春の海』にございます。和楽器の琴と尺八で演奏される、日本の正月の風物詩――とでも申しましょうか」
「へ~。それはそれは、雅だねえ~」
ようやく納得したらしいフィリップは、うんうんと頷き。
昨年に引き続き、日本での年越しと正月を味わえなかったヴィヴィは、
束の間の正月気分を噛み締めながら、即興の『春の海』を弾き切ったのだった。
お箏
♪チャン チャカチャカチャカチャン~
チャン チャカチャカチャカチャン~♪
尺八
♪ホェ~~ ホ~ホホホ-ホ-エ~♪