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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
2024年へと年を跨ぎ、刻々と経過していく日々の中、
ヴィヴィは少しずつだけれど、先に進む為の行動を起こしていた。
1月5日(金)21:00。
6時間に渡る夜練を終え、フィットネスルームへ戻る道すがら、
「ヴィヴィ、戻らないの……?」
後ろに着いて来ていた筈の妹が、逆方向へ向かう様子に気付いたクリス。
「あ、うん。隣のリンク、今から空くから」
オックスフォードSCには、オリンピック規格のリンクが2つある。
1つは、フィギュア用。
もう1つは、主にアイスホッケー用。
常に使用しているフィギュア用リンクは、今からペアの3組が使用するので、1時間だけ空いていた隣のリンクを予約していた。
なので「クリス先に帰ってね~」と微笑み、空きリンクへ向かおうとしたヴィヴィ。
しかしその腕は、後ろから掴まれてしまった。
「駄目だよ……。ちゃんと、休まないと……」
クリスのその心配は もっともで。
朝練+夜練で1日10時間も身体を酷使しているのに、これ以上の運動は疲労骨折などの怪我を招く恐れもあった。
「ありがとう、でも大丈夫。振付を1時間するだけだから、体力の消耗は無いし」
「振付……?」
振り返って説明する妹に、兄は不思議そうに微かに首を捻る。
「うん。エキシビナンバー、変えたくて」
しっかりした口調で理由を述べたヴィヴィに、20cmも上にある灰色の双眸は、一瞬だけ揺らいだ。
「……そう。コーチは、何て……?」
「あ、うん。もちろん、先に了解貰ったよ~」
抜かり無い笑顔を浮かべ、何故か指先を曲げたピースサインを見せてくる妹に、
双子の兄はようやく、その細い腕の拘束を解いた。