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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      



「ぅん……っ? ちょ……、わぁ、何やってっ!?」

「あ、こら! 動かないデ」

 戸惑いを浮かべた女の声と、それを窘めるもう一つの声。

「にゃっ!? あ、穴にまで塗らな……ふひゃひゃっ」

 暖炉からの熱が隅々まで行き届いた、だだっ広いリビング。

 ソファーの上で細長い両脚をパタパタ動かし、微かな抵抗をしていたヴィヴィは、

 あまりの擽ったさに耐えられず、ついに頭を仰け反らした。

「も~~、動くと出来ないわヨ~~」

 緑色の瞳を眇め、呆れ声でぼやいた同居人・ダリルに、薄い唇を尖らせるヴィヴィ。

「だってぇ~~、あ……」

 こうなったら後は実力行使――とばかりに、ソファーの上の華奢な躰に馬乗りになった(一応)男。

 一瞬、灰色の瞳は驚きで見開かれたが。

 少々骨ばったダリルの指が、再度己の肌に這わされると。

「んっ くふ、……ひゃっ」

 また変な笑い声と、革のソファーが寄れるキシキシとした音が辺りに満ちる。

「ごらぁっ! 観念して大人しくしやがれ~~!!」

「ダリルが変な事ばっか、するからだもん!」

 いつもの女言葉をかなぐり捨て、地声で凄んでくるダリルに、キャンキャン抵抗するヴィヴィ。

 そんな賑やかな2人の間に割って入ったのは、脱力を滲ませた突っ込みだった。

「……なに、イチャイチャしてるの……?」

 いつの間に現れたのか。

 男女2人が折り重なり合うソファーの隣、こちらを覗き込んできたのはクリスだった。

「「イチャイチャ?」」

 全くイチャイチャしている自覚の無かった男女が、不思議そうに振り返えれば。

 2人顔は何故か、灰色の泥状の物でドッロドロだった。

「ど……“泥お化け” が2匹……」

 さすがに驚いた様子のクリスが、2人から1歩後ずさった。

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