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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 うん。

 “ツルペタ世界代表” のヴィヴィが滑るなんて、下手したら “お笑い系プロ” になってしまう程の迷曲だ。



 一旦、暗転が落とされたリンク上。

 所定の位置に着いたヴィヴィは、見事かさ増しされた胸の部分を、手で ぽふぽふして気分を高める。

 ちなみに、

 このプロの “一番の難題” は、

『無い筈の胸を、ある様に魅せる事だよっ (||′д`)ゲフンゲフン』


(さあ、巨乳の神よ! 我の身体に憑依するのだぁ~~っ!!)

 くりんくりんにカールした金髪をルーズに留めた頭の中、そんな阿呆な事を喚いていると、

 暗いリンクにはようやく、オーケストラの小気味良い前奏が響き始めた。



 スポットライトに浮かび上がるのは、胸上に両掌を乗せたヴィヴィ。

 ベアトップの胸に大きなシャーリングを寄せ、腰にはかさ張る程大きな黒リボン――の衣装を纏った姿には、

 本当に “巨乳の神” が降りたかのような自信と、幾ばくかの色気に満ちていた。


『The French are glad to die for love
 ―フランス人は「愛のために死ねる」と言うわね

 They delight in fighting duels
 ―彼らは喜んで決闘に臨むのよ』


 胸から持ち上げた右腕は「跪きなさい」と言わんばかりに、鋭く氷上を指さし。

 次いで、右肩の上で両手を重ねると、その肩をチャーミングに持ち上げ、バチンとウィンクする。 


『But I prefer a man who lives
 ―でも、私は生きてる男の方が好いわ』


 うっとりとした歌声に導かれバックへ滑り出すと、

 両足のトウを大きく開いたスプレッド・イーグルを、アウトエッジで乗りながら弧を描き、


『And gives expensive jewels
 ―だって高価な宝石をくれるんだもん❤』


 次いでインサイドエッジに乗り換え くの字に身体を反らしながら、氷上に滑らかなS字が描き。

 胸上に両手を当てたヴィヴィは、まるで「宝石に恋しちゃった❤」を言わんばかりに、うっとりと目蓋を閉じた。

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