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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
『A kiss on the hand
―手の甲に口付けするなんて
May be quite continental
―かなり紳士的かもしれない
But diamonds are a girl's best friend
―でも、ダイヤモンドが女子の最高の友よ』
軽快な音楽に乗り ノリノリで滑り出せば、腰の黒リボンがポンポン軽やかに跳ね。
二の腕まであるピンクグローブに包まれた手の甲を指さし、
赤く色付いた唇で客席にも投げキッスを贈る。
『A kiss may be grand
―キスは素晴らしいことかもしれない
But it won't pay the rental
―でもキスなんかじゃ
On your humble flat
―貴女の粗末なアパートの家賃も払えないし
Or help you at the automat
―自販機も貴女を助けないわ』
時折 胸を揺らしたり、腰を振ったりと愛嬌のある振付を挟みながら、ぐんぐんスピードに乗ったヴィヴィ。
3回転アクセルを危なげなく着氷すると、フリーレッグを頭上まで高く振り上げ。
最高難度のアクセルに感嘆していた聴衆が、更に湧く。
『Men grow cold as girls grow old
―女が老いると男共は いずれ冷たくなるわ
And we all lose our charms in the end
―そして私たちは皆、色香を失ってしまうの』
右軸足のアラベスク・スパイラルは腰上で両肘を組み「やれやれ」と言いたげに、金の頭を振り。
右足を身体の前に持ち上げた、左軸足のファン・スパイラルは、
むすっと腕組みしたヴィヴィが、赤い唇を不満気に尖らせ。
歌詞にマッチした振付に、場内から笑いが上がっていた。