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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
スカートをずり上げ、媚びを売る仕草。
胸・腰・脚を撫で上げ、女の貪欲な性を滲ませる振付。
極めつけは、
ラスト――“切り裂きジャック” に腹を掻っ捌かれ、
自分の臓器を両手に掲げ、驚愕の表情を浮かべている。
――とくれば、話題に上らないほうがおかしいくらいで。
結局、話題が話題を呼び、
“ミュンヘン五輪の悲劇のヒロイン” と勝手に祀り上げられていたヴィヴィが、題材に扱った『LULU』は、
世界各国でオペラが上映され、その交響曲も多数演奏されるという、計算外の経済効果を生み出すに至った。
世間が騒がしい一方、
ヴィヴィは1年という歳月を掛けて、ずっとFS『LULU』と向き合っていた。
「『LULU』はヴィクトリア選手には向かない、らしくない」
「20歳になって、大人にならなきゃと焦り、間違った方向に解釈してしまっているのでは?」
シーズンが始まった当初は、そう否定の言葉が多かった。
加えて、セカンド・ジャンプの影響で、点を伸ばせなかった自分。
それら全てが、
「今のお前じゃ駄目だ」と、世界中から非難されている気がして
「もうお前の時代は終わった」と、あからさまに睥睨されている気さえして。
当たり前だが心も気持ちも、重く沈み込む一方、
もう何も失うものが無かったヴィヴィは、
そんな逆境とも言える状況に己の身を置き、自分を痛めつける事で、
どこか仄暗い快感を覚えていた。