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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 そうして、

 プログラムの最後、犬猫の様にあっけなく殺される『LULU』を演じる度に、
 
 ヴィヴィは “2人の自分” を殺し続けた。


 1人目は――


『お前がどんな過ちを犯そうが、俺は結局お前を許してしまう。

 ヴィクトリア……、お前が何をしようが

 “俺の中のお前” は殺せはしないよ』


 匠海が愛していた、かつての自分――。


 2人目は――


『今すぐは無理でも、お前は絶対に俺の元へと戻って来る。

 お前は俺がいないと駄目だから――。

 俺がいないと生きていけない――そういう子に仕立て上げたのだからね』


 兄を殺すふりをして寝込みを襲った自分に、匠海が発した呪詛。

 その言葉通りに、ふらふらと兄の元へと戻りそうになる、弱い自分――。


 その “2人の自分” を、

 ヴィヴィは来る日も来る日も、

 『LULU』を繰り返し演じる事で、殺し続けたのだ――。




 ◇◇◇




 7月29日(土)――ロンドン滞在2日目。

 いつも通り早朝からリンクに赴き滑り込んだ双子は、昼前には屋敷に戻った。

 が、ヴィヴィはランチを採ってすぐ、1人で外出した。

 目的はもちろん、洋服を買いに行く為だ。

 2時間ほど市内をうろつき、夏らしいサブリナパンツとスキニーを購入し。

 帰宅すると両親に掴まり、強制的にアフタヌーンティーという名の酒盛りに付き合わされた。

 祖父母 と 両親 と 匠海夫婦、そして 双子。

 加えて、おねむの時間だったのか。

 瞳子の腕の中で微睡んでいた筈の匠斗が、気付けばこちらをじいと見つめていた。

「………………?」

 幼児特有の黒目がちのくりくりした瞳を、不思議そうに見返せば、

 それに気付いたらしい匠斗は、ぷいと顔をそむけてしまった。

 その途端、

(か、可愛くない……っ)

 ヴィヴィは大人気ない毒を、心の中で吐いていた。

 こっちだって、すき好んで兄の子供を目に入れたい訳じゃない。

 出来る事ならば、一生会いたくなんて無かった。

 ただ、どんな子供であろうと、誰の子供であろうと、

 その子供自身には何の責任も無いと思うから。

 だから……。

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