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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
1月21日(日)に行われた Art On Ice 2024の成功を祝い、
レストランを貸し切っての打ち上げに、関係者は皆 雪崩れ込んでいた。
双子もシェフィールドの郷土料理を摘まみつつ、酒豪の先輩スケーター達とカパカパ グラスを重ねていると、
「あらら……」
スマホのメールを確認していたらしい、当ショーの座長であるステファン・ランビナール(スイス)の上げた声に、
同じテーブルにいた数人が「どうしたの?」と興味を惹かれていた。
「あ~~、うん。今日まで全米選手権だったでしょ?」
皆の顔をちらりと見渡したステファンの表情は、どこか冴えなくて。
「あ、結果 出たんですか?」
ピンときたヴィヴィの問いにステファンは鷹揚に頷き、その結果を映し出したスマホを読み上げた。
『2024年の全米選手権 女子シングルでは、まさかの番狂わせが起きた。
20日のSPで、1位と0.51の差で2位に着けていたヴィヴィアン・リー(21・ダラス)が、
最終日のFSでは、3回転ルッツでエッジエラーを取られ、
コンビネーションスピンでも、レベルを取りこぼすなど精彩を欠き。
全米選手権初出場の14歳のジュニア選手と、15歳の若手選手に、
2022年の平昌五輪女王が、表彰台の1位2位を明け渡す結果となった。
2年後に我が国で開催される冬季五輪。
その出場枠を巡る熾烈な戦いは、既に始まっているのだ――』
ガヤガヤと賑やかなレストランの中、ステファンの声を聞いていた面々は、一瞬押し黙った。
かくいうヴィヴィも、他人事とは思えぬ そのニュースに、ほろ酔い気分も すっと醒めた。
(アン……大丈夫かな……)
世界選手権・四大陸選手権・冬季五輪の、各国の最大出場人数は3枠。
そのたった3枠を、10代の軽い身体で高難度のジャンプをポンポン飛ぶ若手選手と、
それまでスケート界を引っ張ってきた20代の中堅・ベテラン選手で取り合うのだ。