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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 そして その中でも、

 2018年 五輪女王のヴィヴィ と、

 2022年 五輪女王のヴィヴィアン・リー は、

 常に他と比較され かつ 追われる立場――で。


「ヨーロッパ選手権は、来週か~」

「やっぱロシア勢が、優勢なんだろうね~」

 各国のスケート事情へと話の流れがシフトしていくテーブルから、ヴィヴィはそっと席を立った。

 会場から少し離れたウェイティングルームに移動し、スマホで全米会場のあるノースカロライナ州との時差を調べたヴィヴィは、

 居ても立ってもいられず、電話を掛けていた。

 ノースカロライナ州グリーンズボロは、現在は同日の18時で。

 駄目元と思って掛けた通話だったが、5コール目で相手は出てくれた。

『ヴィヴィ、どうしたの~? そっちもう夜中でしょ?』

 いつもより元気の無さそうな相手の声。

「うん。アンの声、急に聞きたくなっちゃってね」

『ふふ。それはそれは。私の美声なら幾らでも聞かせるわ~』

 電話口でおどけるヴィヴィアン・リーに、ヴィヴィは「あははっ」と吹き出した。

 しかし、やはり意気消沈した様子のリーが、ポツポツと試合の結果について語りだして。

 ずっと相槌を打ちながら聞き続けていたヴィヴィに、

『まあ、世選の派遣選手には、ギリギリ選出されると思うわ~』

 リーはそう言って語り終えた。

「全日本もね、15歳の選手が3回転アクセル降りて、世選に選ばれたんだ~」

『知ってるよ! こっちでもすっごいニュースになってたもん。ええと、リンカ ワタナベ……よね?』

 若干 興奮気味に、帰ってきた返事。

 それほど、女子に於いて3回転アクセルを試合で飛べる選手というのは、酷く稀という現われだった。

「いやぁ~、若いって凄いよね~~」

『だ~ね~~』

 2人とも まだ21歳だというのに。

 女子選手のピーク年齢を思えば、その心境に至るのも、致し方無いのかも知れない。

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