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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 シェフィールドでのショーの翌日――1月22日(月)

 セント・エドモンド・ホール(カレッジ)では いよいよ、ヒラリー・ターム(第2学期)がスタートした。

 こらからの8週間はまた、1に学習、2に学習――の日々となる。

 いつも通りに朝練を済まし。

 午前中に2本のレクチャー(講義)に出席したヴィヴィは、カレッジの食堂で友人達とランチを摂ったのち。 

 チャペルで開かれたランチタイムコンサートで、賛美歌にウトウトし究極の癒しも頂いた。

「ふわわ……、ただいま~~」

 徒歩5分で行き来出来る我が家に一旦戻り、シンボルマークである鮮やかな青扉を押し開けば、 

 大口を開けて欠伸をする帰還者の元へ、バタバタ賑やかな足音が迫って来る。

「ヴィーっ!」

 血相を変え人んちのリビングから飛び出して来たのは、ご想像の通りのフィリップで。

「な、なに……?」

 新学期早々、賑やかな某国の王子に「かの国でテロでもあったのか?」と一瞬 戸惑ったヴィヴィだったが。

 そんな心配など、杞憂も杞憂。

「これで、これで結婚してくれっ!!」

 ヴィヴィの目の前、いきなり片膝を突いたフィリップは、何故かスウェード張りのジュエリーケースを掲げ持ち、

 前後の脈絡など完全に無視し、熱烈な求婚をしてくるではないか。

「…………はぁ…………?」

 どうして自分が “ジュエリーケースと引き換え” に、とんでもなく面倒臭い男と、婚姻を結ばねばならぬのか?

 帰宅した途端に巻き込まれた厄介事に、眉根を寄せれば。

「ダイヤモンドだよ、ダイヤモンド! 家にあるのを片っ端から掻き集めてきたんだ」

「……ご、ごめん……。ええと、何を言ってるのか、さっっっっっっぱり分かんない」

 確かに彼が指摘する通り、ケースの上には小ぶりな宝石が5個ほど転がっていたが。

 “ジュエリーケースと引き換え” が “ダイヤモンドと引き換え” に替わったとしても、

 それがどうして “結婚する” という論理展開になるのだろうか。

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