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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 薄い唇の端を ひくりと引き攣らせたヴィヴィに、やっと立膝から立ち上がったフィリップは、無駄に高い身長差から見下ろしてくる。

「またまた~~。ヴィーがエキシビで滑りながら、歌ってたんじゃないか。

『Diamonds are a girl's best friend
 ―ダイヤモンドは女の最高の友なのよ』

 ――って」

「……~~っ!?」

 昨日、ここから3時間しか離れていないシェフィールドで、初披露したばかりのエキシビ・ナンバー。

 英国では今週末にスポーツチャンネルで録画放送される予定だが、何故その内容を いち早くフィリップが知っているのだろうか。

 しかも、単なるプログラムを曲解し、本物のダイヤを持参するだなんて――

「今日は無理だけれど、貸金庫に取りに行けば、もっと大きな石があるし。あ! 何だったら今からロンドンへ買い付けに――」

 ペラペラと口説き文句(?)を並び立てる男に、とうとうヴィヴィは相手が王子という事も忘れて叫んでいた。

「あんたは、どアホかぁ~~っ!?」

「へ?」

 どアホ扱いされたというのに、きょとんとするフィリップに、

(むっきぃ~~~~っ!!!)

 と沸点すれすれなヴィヴィは、コートを纏った両腕を振り下ろし力説するしかなかった。

「あれはエ・キ・シ・ビ! お客さんに愉しんで貰う為に選んだだけ! ただそれだけっ」

「え~~」

 玄関ホールの吹き抜けで、キャンキャン無駄吠えするヴィヴィが五月蠅かったのか。

 2階にいたらしい同居人のダリルが興味深そうに、階下の2人を覗き込んでいるのが目に入る。

「「え~~」じゃないっ てか、このダイヤ。モニャコ国民の血税で買ったんでしょ!? なのに、なにそんな簡単に人にあげようとしてんのっ」

 まあモニャコ公国は、個人に掛る所得税が0円で有名だが(法人税は33.3%)

 税収1000億円の70%を占める付加価値税(日本でいう消費税)等は国民から強いているのだから、やはり血税であろう?

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