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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
「は? 血税……? いや、これ、俺のポケットマネーで買ったものだけど?」
「え……?」
二重どころか三重はある、垂れ目がちな青い瞳を見返せば、その真上にある眉が心外そうに跳ね上がる。
「俺、公務以外で国費に手を付けたこと無いし」
「……え……?」
(え……? あれれ? 血税使い込んでる、ダメダメ皇太子(酷)じゃないの……?)
ではどうして、これらゴロンゴロン転がっているダイヤモンドを、こんな青二才が所持出来るのか?
3カラット超のものが4つ、1カラットくらいのものが1つ――だなんて。
少なく見積もっても、恐らく2千万円は下らないと思うのだが。
しかも、カラーやクラリティ(透明度)のグレードが高ければ、その2倍にも3倍にも価値は跳ね上がる。
「ヴィヴィってば、もしかして知らないノ~~?」
勢いを削がれてしまったヴィヴィを、フォローしようとしてか。
2階から降ってきたダリルの問いに、巻いたままのマフラーに埋もれがちな金の頭が傾く。
「知らないって、何を?」
「フィリップのラストネーム(苗字)、知ってル~?」
「え? ええと、“ケリー” ……?」
彼の祖母にあたる、元女優の先代王妃の苗字を上げるも、当人に間違いを正された。
「違うよ。今、俺は母方の苗字を名乗ってるからね」
「母方? ふ~ん」
話が見えないヴィヴィが、きょとんとしながら呟けば。
階段を降り始めたダリルが「こりゃダメだw」と言わんばかりに、猫っ毛の頭を抱える。
「ヴィヴィってば、ホント~~にっ! ぜんっ……ぜんっ!! 王子に興味なかったのネ……」
「え? うん」
ダリルまで何を今更。
今迄、完全に拒絶しまくり断りまくりだった自分のどこに、フィリップに対する興味があるように見えたのだろうか。
何だか、ダリルは説明するのも面倒臭そうで。
その代りを買って出たのは、己の主に もしもの事が無いか――陰で気を配っていた執事の鏡・朝比奈だった。
「お嬢様。 “ペタンクール” という苗字を、お聞きになったことはありませんか?」