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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

「ペタンクール……? ああ、聞いたことあるよ。確か、L'Oreral(ロレラル)の一族が、そんな苗字だったよね?」

 一応 経済学を学んでいる身としては、それくらいは承知のこと。

「フィリップ様の略名は、Mr.フィリップ・ペタンクール――L'Oreralの創始者のひ孫でいらっしゃいます」

 あまりにも淀み無く “全ての答え” を提示した朝比奈に、

「………え………?」

 一瞬、何を言われたのか理解出来なかったヴィヴィは、鳩が2・3発 豆鉄砲を食らった様な、間抜けな表情を浮かべていた。



 こ……っ

 この、な~~んも考えて無さそうな、頼りない王子が、

 世界最大の化粧品企業 L'Oreral(ロレラル)の一族、ですと……?

 ん……?

 あれ、待てよ……?

 確か L'Oreralって、リリアンヌ・ペタンクール(王子の曾祖母)が創始者で。

 その娘のフランソワーズ・ペタンクール(王子の祖母)が、この前、

 資産30億ドル(1㌦=100円とすれば3000億円だね)で、

 世界富豪番付の9位(フランス人としては1位)に、しっかり名を連ねていた気が……



「……っ う゛え゛ぇえええええええ~~……」

 気付かないほうが、知らないほうが幸せだったかも知れない真実に、

 薄い唇から心底嫌そうな呻きが漏れる。



 ちょっとっ 

 ちょっと待ってよぉ~~っ!?

 このエセ王子ってば、 

 モニャコ公国の皇太子にして、皇位継承権も第一位で。

 しかも実家は “超が付く程の億万長者” だっての~~っ!?



 ムンクの叫び )゚0゚( の如く両手で頬を挟み、世の中の不条理を嘆く女の顔を、

「ヴィー、少しは俺に興味持ってくれた?」

 にやりと勝ち誇った笑みを浮かべた男が、覗き込んできたが。

 対するヴィヴィの返答はというと、

「ううん(キッパリ)」

 少々、相手が不憫に思えるほど手厳しいものだった。


――――
※ひ孫:孫の子

●―――○曾祖母
  ↓ (創始者)
祖母○―●
   ↓
  母○―●国王
    ↓
 フィリップ●曾祖母から見たひ孫

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