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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
大体、ディベートの醍醐味は結論ではなく、その過程でしょうに。
てか、も~~っ!
フィリップ、ガールフレンド沢山いるのに
何で私の尻なんか追っ掛けてるんだろ。
ていうか……
どうして男って
1人の女で満足してくれないんだろう……?
小走りだった歩調が、徐々に早歩きになり。
その足取りが重くなるにつれ、気持ちもずっしりと重みを増していく。
自分は、たったの4ヶ月だったが
愛人を経験した。
妻のいる夫が、外で他の女を抱いて。
子のいる父が、妻以外の女に愛を囁く。
不倫する前の自分であれば
それがどんなに おかしな事で
不道徳な行いなのか。
解っていた筈――だったのに。
それがいざ、己が当事者となってしまえば
何が普通で
何が常識で
何が誠実な行いなのか。
そんな普通の人だったら判る “当たり前の事” が
少しずつ物差しが狂い始めて
結果、何が普通の事なのか
何だか判らなくなってしまった。
うちの両親は、本当に忙しい人達で。
子供が幼い頃から、屋敷にいない事などザラだった。
「それらは仕事の為」だと
「私には兄達も執事達もいるから」と
この21年間、ずっと己に言い聞かせてきたけれど。
果たして、真実はそうだったのだろうか――?
母は――いつもリンクにいたから
そんなことは無いと、思うけれど。
では、父は――?
本当は「仕事だ」「出張だ」と言いながら、
外に愛人がいたのでは?
すぐに思い浮かべられる、愛する両親の微笑み。
それは
接する時間は少なくとも、全身全霊で愛娘を愛してくれた
愛しい記憶の結晶、の筈なのに。
ぐるぐる巻きのマフラーをずり上げ、頬を伝う涙を隠し
混乱し直情的になっている頭を冷やすべく
深く深く、冷たい外気を肺に取り込む。
己の大切な人達が慈しむ対象にさえ
不信感を覚え、穿った目を向けてしまう。
そんな自分は、だいぶおかしいと
そう、解ってはいるのに。
これが
不倫という罪を犯した弊害だとするならば
ちょっと
“厭なもの” を見過ぎたのかもしれない――