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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
2月の第3週。
(双子は不出場の)四大陸選手権の熱気も冷めやらぬ中、ヒラリータームも4週目に突入。
学部2回生のヴィヴィも、修士1回生のクリスも、
早朝と夜以外は勉強漬け――という充実した日々を送っていた。
そんな中での休日ともなれば、朝・夜練はあるのものの、それ以外はゆっくりと羽を伸ばし。
やれ「毛繕いでもしょうかねえ」と、完全に気を抜いていた双子。
そんな凪(なぎ)まくった湖面に一石を投じ、大きな波紋を起こしたのは――
「お2人とも、松濤の旦那様と奥様と、SKYPEが繋がっております」
双子に声を掛けながら、ノートPCを手に傍に寄った朝比奈。
そう――
他ならぬ双子の両親だった。
『クリス~~♡♡♡ ヴィヴィ~~♡♡♡ 元気だったか~~?』
長方形の画面の中。
父・グレコリーが、めい一杯両腕を振っていた。
「見ての通り……元気です……」
昨年末振りの父親に対しても、通常運転=無表情のクリス。
そんな息子に苦笑している母・ジュリアンに、声を掛けたのはヴィヴィ。
「あ、マム。成田・下城ペアの銀メダル、おめでとう!」
先週末に行われた四大陸選手権で、彼女の教え子達が素晴らしい演技で台乗りしていたのだ。
『あら、ありがと~~』
こうやってテレビ電話をする事は まれだが、ジュリアンと双子は元師弟という事もあり。
意外と こまめに、メッセや電話のやりとりをしていたりする。
まあ大体の連絡が、ジュリアンからの “冗談交じりの駄目出し” なのだが
『え゛~~、Bambiちゃん、ダッドには~~?』
自分には挨拶してくれぬ愛娘に、日本にいる父は若干すねた口調で。
「あ……えっと。あ、会いたかったよ、ダッド」
何故か口籠ったヴィヴィにも、グレコリーは顔を見られただけで、嬉しそうに頷いていた。