この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
今から3週間前。
父に対して、薄汚く辛辣な妄想に耽ってしまった。
こんなに子煩悩で素敵な父を、一瞬でも疑ってしまっただなんて。
一人で勝手に後ろめたさ を覚えたヴィヴィは、
薄い胸の中で何度も父に謝ったのだった。
互いの近況報告はもちろん、積もる話も沢山あり。
その後、どんどん脱線していく会話が30分も続けば、
「ところで……何か用が、あったんじゃない……?」
さすがに我に返ったクリスが、そう問うた。
『あ、そうそう、そうだった。ねえ、ジュリアン?』
電話の向こう側で、妻の腰を抱いているグレコリーが そう促せば。
何故か急に顔を顰めたジュリアンが、面倒臭そうに要件を告げ始める。
『あ゛~~……。最近、私のところに、取材陣が押し掛けてくるのよね~~』
「取材陣……? 何で? マム、何か悪さでもしたの?」
もしや「国際試合の場で教え子を罵倒し尽くした映像」でも、各国に出回ったのだろうか?
能天気に首を傾げる娘に、母は己の豊満な胸に両手を添えながら主張する。
『するかいっ! こんな品行方正な40代。他に居ないでしょ!』
「「………………」」
どこから突っ込んで良いのか判らぬジュリアンの台詞に、双子揃って沈黙していたが。
「あ……、もしかして、国籍のこと……?」
察しの良いクリスが、ぽつりと呟いた。
国籍――つまり、日本と英国の二重国籍の双子には、
そろそろ国籍選択の期日が迫って来ているのだ。
『そうよお! あんまりにもしつこく聞いてくるから、私も「かぁっ」ってなっちゃってっ!』
余程、メディアに追い駆け回されたのか。
怒り心頭気味のジュリアンの喚いた言葉に、
前のめりで画面を覗いていたヴィヴィの表情が、嫌な予感に固まる。
「へ……?」
(「私も「かぁっ」ってなっちゃってっ!」って……?)